琵琶口説 大悲山の大蛇
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- Опубликовано: 10 фев 2025
- 2024年12月12日 録音 渡部八太夫 筑前琵琶弾き語り
2025年1月23日 ビデオ編集
福島県南相馬小高(おだか)昔話
大悲山の大蛇
時は、南北朝の御代
南相馬の郡、小高(おだか)郷に、
優れたる盲僧琵琶師、ひとりあり
その名は、「玉都(たまいち)」と申すなり
盲僧玉都(たまいち)、毎夜、大悲山薬師堂にお籠りあり
琵琶を弾き、目が開き給えと、願掛し給うところに、
ある夜の丑三つ時、見慣れぬ武士(もののふ)現れけり
やがて、玉都(たまいち)が琵琶を置くと、男は、
「毎夜聞こえる、結構な琵琶の音、
紛う事なき、玉都(たまいち)殿
今宵は、とうとう、ここまで、邪魔を仕り候
そういう我は、誰あろう、この薬師堂の池に住む大蛇の化身なり
さて、霊力溢れる其方の琵琶の音により、
我が身の鱗が、心地よく震動なし、
身の丈たちまち、百尋あまりになったこと
これ、偏に、汝のお陰なり、
しかしながら、この薬師池では、狭くて叶わぬ
そこで、明日より、七日七夜、大雨を降らせ
この小高(おだか)郷全体を大沼となし
龍にならんと欲するものなり
もし、そのこと叶うならば、
お礼に、御身を助け、その目を開けてしんぜよう
されども、もし、この事を
誰かに、もらしたのならば、命はないぞよ」
と、告げるやいなや、かき消す如くに消え失せけり
玉都(たまいち)、はっと驚き
「むう、これは、満願成就の知らせかや?
いやいや、我は仏弟子なり、
大蛇の化身のお告げとは、これ如何に?
さわさりとて、黙っていれば、目が治る
しかし、治った目で見るものは、水の底の小高なり」
どうしたものかと、玉都(たまいち)が、
うんうん、うんうん、頭を抱えて苦しめば
やがて、本堂の薬師如来、燦然と輝きだし
霊験あらたか、薬師如来の御来臨
「おおおん、ころころ、玉都(たまいち)ようく聞け
小高郷の人々、田畑、水没させること、まかりならん
大蛇の目をもらうよりも、心眼開け
これより急ぎ、大蛇を封じる鉄釘百本、用意なし
蛇巻山に打ち込んで、大蛇を成敗仕れ
オンコロコロ、オンコロコロ」
玉都(たまいち)、はっとばかりに、飛んで起き
ははあ、これぞ、誠の霊夢なりと、手を打って
杖を突き突き、目指す所は、小高城(おだかじょう)
御注進、御注進と、玉都(たまいち)が、
もうすぐ、大洪水になりますと、事の次第を知らせれば
殿様、こりゃ、一大事と、
鉄釘、百本、直ちに作らせ
いざ出陣と、向かう先は、蛇巻山
片っ端から、鉄釘を、かっし、かっしと打ち込めば
さすがは、薬師如来の呪い釘
大蛇はたまらずのたうち回り
龍にもなれず、よろよろと、
病み崩れて、腐れ果て、やがて薬師の池に沈みたり
目明きの夢は叶わねど
小高の郷を、洪水より救いたる、
盲僧玉都(たまいち)、郷土の誉れ
さてまた、薬師如来の霊験、おそるべし
疫病神にもなりうるぞと
後の世までも、知られたり
2024年12月9日 渡部八太夫 作
参考HP:おだか 通行手形 :うつくしま電子辞典